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根腐れとは

植物を扱う造園屋にとって「根腐れ」と言う言葉はよく使われます。 お客様からも「木が枯れてきている、根腐れかしら」と言われ、 私も「ああ、この木は根腐れをしていますね」なんて感じです。 更に「根腐れ病」と言う言葉もあります。この「根腐れ」と「根腐れ病」は、別けて考えた方が良いようです。

今回はこの「根腐れ」を植木屋の視点でお話ししたいと思います。

植木屋ですから、一般的な植木の根の話です。例えばツツジや松やモミジ、なんかのことです。草花や野菜などは「水耕栽培」なるものがありまして、話がややこしくなりますので無視して下さいね。意味は、読んで字のごとく「根が腐る」ことですよね。

で、なぜ根が腐るのかです。

その前に、植物の根は動物と同じで呼吸をしている。光合成がナンチャラで・・二酸化炭素がナンチャラで・・とかは別の話です。とにかく呼吸ですから空気が必要なんです。そうなんです「酸素」を含む普通の「空気」が、人間と同じで絶対に必要なんです。
「植物って二酸化炭素が有れば良いんじゃないの」と言う方が、たまにおられますので説明させて頂きました。

根腐れに至るまでの大まかな流れはこのようになります。

①根の周囲の酸素が不足する。これを「嫌気状態」と言う。

②根は呼吸が出来ずに窒息する。(死んでいく)

③嫌気状態を好む嫌気性菌や通性嫌気性菌が活発になる。

④その菌が有機物(この場合、窒息した根)を分解し腐敗させる。

⑤結果、木を引っこ抜いてみると根が腐った状態になっている。

と言う事は「根腐れが原因で木が枯れている」と言う表現は間違いですね。「根腐れが起きる程、土の状態が悪く、それが原因で木が枯れている」が、正解なんでしょうね。ご理解頂きたいのは、「根腐れ」は、原因ではなく「結果」であり、原因を作った「理由」を知らなければ「根腐れ」と戦えないのです。

かなり説明がアバウトなので少し補足します。

①は、何らかの理由(後で詳しく説明します)で、土の深い所から嫌気状態となっていくのが一般的である。空気のある地表から遠くなるので空気量が減るのはごもっともですね。

②は、①の理由で根も下の方から窒息していく。健全な状態に見える木でも掘ってみると、根の地表面近くは元気な状態であるのに、深い所の根はブヨブヨとして細かな根は出ていない。これは一部が根腐れの状態である。この状態で長く生きる木もあれば、徐々に枯れていく木もある。

③は、「嫌気状態を好む菌」と簡単に書いたが実はメチャクチャ複雑な分野である。例えば、好気性菌・嫌気性菌・通性嫌気性菌に別れているとか。この難しい名前の菌が土の中の見えない所で植物の根にいろんな事(良いことも悪いことも)をしでかしているとかです。
それと、好気とか嫌気とかの「気」は「酸素」の事です。なので「好気性」とは「酸素が好き」と言う菌であり「嫌気性」とは「酸素が嫌い」と言う菌である。そして「通性嫌気性」とは中間的な「菌」と言う事になる。非常に簡素な表現ですけど。だけど造園屋だからこの程度で進みましょう。
「おおざっぱすぎて判らん」と言う方は、ネット等で調べて下さいね、幾らでも詳細が判りますから。と言うか、本当は先によーく調べてから、こちらへ戻って頂けると嬉しいのですが。

④は、有機物を分解し・・・も、専門外なのでここは逃げます。
「そうか、菌が悪いのか、殺菌剤で退治してやろう」などと絶対に誤解が無いようにして下さいね。土の中に菌がいなければ、そもそも植物は育ちませんから。
又、嫌気性菌や通性嫌気性菌が悪者な訳ではありません。例えば森の中の木が寿命を迎え枯れていく、地表部では好気性菌や通性嫌気性菌が盛んに木を分解していくし、土の深くでは嫌気性菌が根を分解していく。毎年降り積もる落ち葉もそうである、分解され植物の養分となる窒素、燐酸・・等々に変えてくれる。有機農法で堆肥造り・・って、これも全て菌がしてくれています。
菌、菌ってなんでこんなにしつこく書いているか。それは、もし菌を自由に操れる程の知識を得れば、今すぐ脱サラして農業を初めても大富豪になれる。そのくらい土と植物に必須なものなのです。

⑤は、結果的に根が腐り、酷い場合には腐敗臭がします。これは、酸素欠乏が先程の嫌気性菌を増殖させ嫌気性菌は有機物を分解しメタンガスなどを生成します。これがドブ臭い原因なんです。

さて本題です。土中の酸欠が根腐れの原因と判りました。

酸欠を防ぐ方法を考えたいと思います。大別すると3つです。

①土の構造

②水

③菌

この三つを詳しく見ていきます。

①土の構造

土は団粒構造が良い、そんでもって・・・って良く聞きますね。簡単に言うと「土の粒」と「土の粒」それがいっぱい集まっていることであり、その粒同士に適度な隙間があること。この隙間を「気相」と言う。

この気相に根の根毛は入り込み気相内の空気に触れ酸素を吸収している。又、「土の粒」これを「固相」と言う。更に固相と固相の隙間である気相に水分を含めば「液相」と言う。
この液相や固相の表面にある僅かな水分から根毛は水を得ている。
根毛って何?と言う方はこちら この「固相、気相、液相」を「土の三相構造」って言うんですね。そして三相構造の比率が何%とか、三相分布とか、難しい話しになっちゃうんですね。
難しくて書きたくないですね。だから土を見たり触ったりして判断しましょうね。

例えば、園芸店に売っている培養土を想像して下さい。ギュッと握ると潰れますよね、この時、土の粒同士の隙間が潰されて空気が押し出されるから土は縮みますね。この縮んだぶんが気相ですね。そして握ったときに湿り気が手に付きますよね、これが液相ですね。
土に水を掛けると気相を通って下に抜けていく、これ「排水性」です。適度な量の水が気相や固相表面に残る、これ「保水性」です。この当たり前のような土であれば根腐れなんてなりません。

だけど庭の全てをフカフカの培養土に出来ませんよね、費用も掛かりますし、それより植木が倒れちゃいますね、植木にはフカフカの培養土は必要有りません。ある程度の質量(重さ)と、ある程度の締まりがあった方が植木には良いようです。結局、普通の土でいいんです。

誤解の無いように「畑の野菜とか草花とか鉢植えとか」の話ではないですよ。こちらは確かに「固相=4、気相=3、液相=3」の三相構造が良いようですね。

ご理解頂きたいのは、こんな感じです。
団粒構造の本来の目的は、地上と土中のガス交換を良好にし、根に酸素を送るため。
水が抜けることにより、新鮮な空気も地上より引き込まれる。

②水

どんなに「土の三相構造」が立派でも気相が水で満たされると液相と固相だけになります。そしてこの状態が長く続くと空気不足により酸欠となります。「長く続くってどのくらい?」と、なりますよね。私も知りたいです。

例えば三相構造が立派だとして、数日間雨が降り続いて洪水になっても、その後に水が捌ければ木は枯れてませんよね。ここで大事なのは、雨が降り続くことで、同じ水がそこに停滞していないことです。これは突発的な水耕栽培状態なんですね。酸素を多く含む水が根の周りを通りすぎていく状態です。

では、貯め水に同じ日数ではどうでしょう。貯め水って自然と酸素が減りますし、根は溶存酸素を吸収しますし、好気性菌などのバクテリアが死に分解することで二酸化炭素などが増えてくる。これは、水は直ぐ腐るってことです。腐った水の中では木は枯れますよね。

まとめると、こんな感じです。
「植木にタップリ水を与えて下さい」これは、あくまでも上から掛けた水が土の団粒の隙間を伝いながら根の生育地より下に抜けていくことが前提の話である。

「植木に水を与える」とは、水分補給と酸素を含む空気の補給という二つ役目がある。

③菌

これは最初に出てきた「根腐れ病」に関係します。どんな土にも根腐れを起こすような菌はいます。菌がいても発症しないのは、その菌が必要以上に増殖しないから。また、根にはそれに抵抗する力があるからです。

植物は抗体物質を生成して抵抗したり、進入を防ぐ膜を形成したりして、その菌の存在を許容しています。根の周りにその菌がいなければ、自分たちの栄養に必要な無機質を作ってくれないからです。

なのに何故でしょう。まず嫌気か好気かですが、実は病気をもたらす菌の殆どは通性嫌気性菌なのだそうです。
畑って深くまで耕して気相の層が厚いですよね、通性嫌気性菌にはちょうどよいらしい。肥料や堆肥も土のイオン濃度とかにかなり影響を与え、それが抵抗物質の生成に関与するとか、だから連作はどうだとか、複雑らしいです。

ここで私が気になるのは野菜って一年草ですよね。てことは根に年輪が無いってこと、だから表面に木質が無いってこと、だから表皮が傷つきやすいってこと、傷が付けば菌の侵入もしやすいですよね。まあ色々考えて畑に多いのは判るような気がします。

その点、植木はいいですね。表皮もしっかりしているし。しかし、植木の根って傷だらけです。移植の時などは、根の周り全てを傷つけることになります。虫に根を食べられ傷つくこともしばしば、その傷からいつ菌が侵入してもおかしくありません。きっと菌は侵入しているのでしょうね。それでも木の持つ防御機能が働き枯死には至らないんですね。それも土の構造と水の関係が良好であればの話ですけど。

ここまでで、こんな疑問ありませんか?。

水田はなんで大丈夫?とか、水耕栽培はどうなのよ?とか、疑問ありますよね。「根腐れ」の理解に必要なとこだけ少しだけ答えます。

水田の稲は茎の中が空洞で地上部から根に向けて酸素を供給している。水耕栽培は、エアレーション(人工的に水に酸素を溶け込ます)した水を使い、水を停滞させずに流水としている。更に、茎から下の根を全て水中に浸けてはいない、つまり根の一部が空気中に出ている。

根腐れの現状と対処法へ続く

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